山田剛史さんのピアノリサイタルへ(4/20トッパンホール)。
いつもながらの
興味深いプログラムは、今回その焦点に杉山洋一さんの《君が微笑めば、それはより一層澄んでゆく》が来ることでさらに強いメッセージのようなものが放たれました。
全ての作品内にはどれにも様々な「距離」があり、例えば私だったらその遠さを聴こうとしそうなところ、山田さんは彼方に向かって呼び続けます。それはときに叫びのようにも聞こえ、これほど演奏行為が切実なものとして伝わってくるコンサートはあまり経験にありません。
スマートで極めて優秀な山田さんには意外なほどの不器用さをあえてかと思うくらいさらけ出して、ずっと続く危険極まりない時間。こういうのを「全裸中年男性」というのか、と不謹慎な連想・・いや、全裸はともかく(?)中年は失礼すぎ。彼の音楽はいつも瑞々しく、若々しい。圧倒的な2時間。
作曲家なら自分自身の問題意識を作品に反映させることもできるでしょう。しかし演奏家は他人の作品を再現するというところにまず仕事がある。自作自演をした生徒に「演奏を褒められているうちはよくない。作品のよさがまず第一にこないと」と言われたことがあって、演奏家とはそういうものか・・と思ったものでしたが、しかし、やはりどうなのだろう。
彼の杉山作品の演奏は、私の
以前の演奏ではなし得なかった、とても構造的なものでした。何より杉山さんにとっての30年前の何かが、現代の何かとして産み落とされる瞬間。私のは、一種のノスタルジーでしかなかったのかもしれないなあ。